大東京

どうせ今日も捨てるだけのチラシしかないのだろうと、
鍵もかかりゃしない郵便受けを開けると、一通の手紙が入っていた。
ばあちゃんからだった。
そこではじめて、東京へ行くことになったこと、何も言ってなかったなと気がついた。
おかんから住所を聞いたのだろうと思いながら手紙をあけると、やっぱりそうで、
先日お母さんから東京へ転勤になったと聞いておばあさん1晩ねむれなかったよとあった。
新幹線代も高いからなかなか帰れないだろうけど時々電話してやってと。
病気になってないか、身体を壊してはだめだよと、全部で5回も書いてあった。
そして最後に、
「手だいぶ直ったけど字はうまくかけません。又便りします」


そういえばばあちゃん、年末に転んで手首を骨折して入院したんだった。
正月も病院でひとり過ごしたばあちゃんを、一度だけ見舞いに行ったことを思い出した。
身体の小さく、たいしたことないんだけど生まれつき病気持ちの僕を、会うたび気にかけてくれた。
季節のかわる頃になると、ときどき手紙を送ってくれた。
元気ですか?身体に気をつけて、と。


そんなばあちゃんの言葉にただ無愛想に大丈夫と言うだけで、
もらった手紙には一度も返事を出していない。
今度の休みに便箋を買おう。
どんな便箋がいいのだろう。
どんな返事を書けばいいのだろう。
身体は大丈夫、の後に一言、「ありがとう」と書いておこう。